「ちょっとごめんなさい、お宅のお店は何と読むの?」
そう言って、白髪のおじいちゃんが腰をかがめてドアを半分開けた。
「うちですか、うちはラルゴって読みます。音楽用語のあのラルゴです」
「あ、あ、そぅ。昔、キーラーゴっていうところに行って、それと関係あるのかなと思って・・・」
「そうですか。その街とは関係ないんですけど、キーラーゴのラーゴはおなじ語源だと思います」
「あ、そう。ありがとう」
「はい、また」
ようやっと歩いているようなおじいちゃんが、車イスに乗ったおばあちゃんを押している。
二言三言かわしたようだったけど、聞き取れなかった。
キーラーゴ。
昔、二人で訪れた街なのかも知れぬ。
お元気で。
キ
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