店からさほど遠くないところに小さな橋がある。
線路と高速道路をまたいでいるが、車止めがしてあって、近くの人が駅への近道として通るぐらい。ほとんど通行量はない。
この橋に家財をまとめたおじさんが住んでいた。
橋の上に更に高速道路の降り口が高架になっていて、それが屋根となり雨露をしのげるのだ。
段ボール箱だの風呂敷で包んだ荷物だのを台車に載せて、しっかり紐で縛ってある。
紐のかけ方の几帳面さが人柄を表しているようだった。
その傍らに、石で組んだ簡易な炉があり、円い空き缶を載せて、五徳替わりにしている。
おじさんがそこにいる時はいつも火が入っていたが、その火力は意外に強く驚いた。
キャンプ用のストーブを使っているような燃焼音が聞こえるのだ。
外苑の森を後ろに控えるから、燃料となる枯れ木には事欠かないに違いない。
火があって、何か暖かい物を口にできるなら、それはずいぶん心強いだろうと思った。
今年の冬は寒かった。
ワタシがここを通るのは、自転車通勤の朝と決まっている。
今朝、そこを通ると、台車も炉もなく、赤い枠のある貼り紙がフェンスにあった。
どうせお役所からのお達しだろうが、なんて書いてあるのか、自転車を停めて読む気にならなかった。
キ
コメント