「自転車通勤」は、もはや定番となった。
「オヤジが一念発起。少しは健康にも気を使うようになった」そう映る構図には、実はウラがある。
昨年の12月、ワタシは「運転免許」を失ったのだ。
12月生まれの人は気をつけた方が良い。
大筋はこんな感じだ。
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そろそろ誕生日も近いと思って免許の更新が気になった。
「確か平成18年が期限だったよな」
財布から出した免許を見て驚いた。
確かに平成18年とあるが、その後には1月の誕生日が記されている。
「道交法が改正になって、誕生日の一ヶ月後までが期限となりました」と鮫洲の担当は電話口で言った。
「え? じゃぁ、もう期限切れなんですか?」
「はい、失効です」少しだけ済まなさそうに声を落とした。
「どうしたらいいだろう?」
「平成18年1月○日までが期限だとすれば、期限が切れて半年以上1年以内ですから、こちらに来ていただければ仮免許は交付されます」
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ああだのこうだの後悔しても始まらなかった。
入院していた、海外に行っていたなど何かやむを得ない事情があれば、考慮されるらしいがそんな理由はない。
年末のバタバタもあったから、すぐあきらめて、仮免許を交付してもらった。
ワタシは、これまでの免許をすべて試験所で取っている。
「無免許でつかまったと考えたら、仮免もらえるだけで御の字だ」と納得したのだった。
数日後、もう年内も数えるほどというある朝、ワタシは鮫洲の試験場にいた。
学科試験を受けるためだった。
ホントは朝早く起き、テキストを丸まる読み終えてから行くつもりだったが、前日の忘年会が長引いてとてもそんな余裕がなかった。
どうしようか迷ったが、下の娘が「大丈夫でしょ」と言ってくれたのが支えになって、行くだけ行こうと決めたのだった。
文章問題が90問(各1点)、これまで見なかったイラスト問題が5問(各2点)。あわせて90点以上で合格。
昔に比べてずいぶん厳しくなった。
ワタシの受験番号は「008」。窓側の前から2番目の席だった。
周りは当然若い子が多いが、ワタシのようなオジさん、オバさんもチラホラ目につく。
受けたことのある方ならご存知だろうが、学科試験はある程度の良識と読解力があれば、それほど難しいものではない。
ただ、中には微妙に迷うのがあって、それにはまず感で答え、問題の番号をメモして最後に改めて考え直すことにした。
「助手席にチャイルドシートを備え付けた。効果を高めるため席をなるべく前方に移動した」
「警察官が両腕を水平に上げていたので、警察官の1m手前で停車した」
「右折車線で信号待ちしていたが、安全が確認できたので、交差点の中心ぎりぎりのところを素早く通過した」
その他、坂道で相互通行ができない場合の優先なんかも迷った問題だ。
どうかなぁ?
自信のないのがすべて間違えていたら落ちるかも知れない。ポカミスだってあるだろうし。
そう思った。
終了まで後1分。
運は天に任せるしかないと思って、内モンゴルでもらったお守りに手をやった。
服の上から手を当てていると不思議とお守りが温かくなったように感じた。
窓の外では仮免の技能試験が行われている。
果たして、ワタシは合格した。
しかし、それは最初の一歩であって、その後2ヶ月近く、「自転車通勤」の途中でも警察官を見ると少し引け目を感じる暮らしのプロローグに過ぎなかった。
<つづく>
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